ユニバーサルデザインと減災の関係

日本は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)、2004年10月23日に発生した新潟県中越地震、2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)とその後の津波、福島第一原子力発電所の事故による甚大な被害、そして、2016年4月14日に発生した熊本地震と、立て続けに大きな地震に見舞われました。さらに、近年は水害や土砂災害などの自然災害も多発しており、学校教育における「防災・減災教育」の充実は喫緊の課題となっています。

このような状況のなか、本研究会が着目したのは次の点です。

これまでも防災教育は全国の学校で行われており、いのちや人々の暮らしと直結した家庭科の授業でも、防災の視点に立った授業がなされています。しかし、本研究会のメンバーが2011年に被災地で聞き取り調査を行い、その後収集した情報から明らかになったのは、避難所で発生している災害関連死をはじめとする諸問題の根底に人々の多様性の視点の欠如があるということでした。

私たちはこれまでユニバーサルデザイン(UD)を「多様な人々に対する、社会生活を送りやすくするための製品、施設、情報、制度等のデザインのことで、その人の自立や自由をより可能にするもの」と定義し実践研究をしてきましたが、このUD理解が減災につながることを感取しました。

次の自然災害に備えた食料や生活用品の備蓄とその活用方法の知識・技能の習得といった、一人ひとりの心がけはとても大切です。しかし、超高齢・人口減少社会のなかにある日本にとって、今後は若者の「多様な人々のなかに自分も含まれる」という当事者意識の高揚と、彼らが避難所設計の主体者となって被災者支援に携わる可能性も念頭においた教育が求められると捉え、減災教育プログラムを開発しようと思いました。UD学習をした上で、減災学習をするというイメージです。